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2025/06/15 23:23

〜静岡の景色〜

「うちのジェラートは、“静岡の景色”が味になったものだと思っています。」
伊豆高原ジェラート工房R65では、年間50種類以上のフレーバーを生み出しています。
でも、そのレシピ作りのすべてに共通しているのは、“静岡の食材をどう活かすか”という問いです。
今回はなぜ地域の素材にこだわるのか。
そしてその背景にある生産者さんとの出会いや、ジェラート職人としての想いをお話ししたいと思います。

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■ なぜ地元の素材を使うのか

静岡に移住してきて驚いたのは、「ここには、まだ全国に知られていない魅力的な素材が本当にたくさんある」ということでした。
たとえば、朝霧高原の牛乳は驚くほどミルキーで、香りが深い。
岩城製茶さんのほうじ茶には、優しさの中にしっかりとした芯があります。
伊東は橙の生産量全国トップですし、ジェラートにすると驚くほど鮮烈な香りになる。
ただ「地産地消だから」ではなく、“世界に通じる素材”がこの地にあるから使いたくなる。
そしてその魅力を“ジェラート”という形で伝えられることが僕の喜びでもあります。

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■ 生産者さんとの出会いから生まれる味

印象的だったのは、朝霧高原のなかとみ牧場さんとの出会いです。
富士山のふもと、広大な草地でのびのびと育った牛から搾られるミルクは、香りが濃く、余韻のある甘さが特徴的。
はじめて飲んだとき「これをジェラートにしたら、絶対に他と違うものになる」と感じました。
それ以来、ぼくの定番フレーバーの一つ「朝霧高原搾りたてミルクジェラート」は、なかとみ牧場さんのミルクで作り続けています。
そのままでも十分に美味しい素材だからこそ、レシピは極力シンプルに。
ただ、その素材の“良さ”を“最大限に引き出す”ことに全神経を集中させています。
こうした出会いが、R65の味の軸になっていく。
お客さんに「なんでこの味がこんなに美味しいの?」と聞かれたとき、
「実はね…」と話せるストーリーがあるのは、作り手としてもすごく嬉しいことです。

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なかとみ牧場さん


■ 素材を活かすために、レシピはシンプルに

素材がいいからといって、何をしても美味しくなるわけではありません。

糖の種類、PAC(凍結点)のバランス、水分固形分のバランス、抽出温度…
すべてが食感や風味に関係してきます。
大切なのは、素材の個性に合わせてレシピを一つひとつ設計していくこと。
ぼくにとってジェラート作りは、科学と感性の間を行き来する作業です。
そして、最終的に“記憶に残るひとくち”になったとき、初めてそれが完成だと思っています。

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■ これからも、静岡の物語をジェラートにのせて

R65のジェラートは、食材と人の物語から生まれています。
ぼく自身もここ伊豆高原に移住して、農家さんや醸造家さん、茶農家さんたちとつながる中で、自分の仕事に対する視点が大きく変わりました。
これからも、静岡の美味しさを、季節ごとに、表情を変えながらジェラートにしていくつもりです。
“地元を味わう”ことが、旅の思い出になるように。
そして“その食材に出会えてよかった”と思ってもらえるように。
それが、ぼくの仕事の原点であり、R65の大切にしていることです。

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